| 8 | 日比野氏(早稲田大教授)の講演 |
| 2002.12.03 |
from N大学ラグビー部 50周年記念式典 |
平成14年5月に、N大学ラグビー部 50周年記念式典がありました。
その記念講演として、早稲田大学教授 日比野 弘 氏のお話があり、
最後にラグビースクールについて、質問をさせていただいた時にお答えいただいた
お話をN大学ラグビー部 50周年記念誌より引用させていただきます。
【質問】
現在、ラグビースクールに携わっているのですが、負けてしまったチームへの接し方について、
日比野先生のお考えをお聞かせ下さい。
【回答】
実は、私、協会では理事として普及育成委員の委員長を担当しております。
子供たちへのラグビーの普及というものは、女性の引っ張り込みと併せて、今後のラグビーを左右する
非常に大事なことだというふうに思います。
ラグビー協会の危機感の一つとしては、ファンが老齢化しているということですね。
新しい子供たちが、みんなサッカーを見に行くように、ラグビーは見に来てくれない。これを何とか
しなくてはいけないということで努力してきております。
その中で、ラグビースクールだけ人口増ということで増えてきております。
これは、各地のそういう任に当たっておられる先生とかご父兄とか、そういった地域指導者の本当の熱意に
よるもんだと、ありがたく思っているわけですが、高等学校なんかは減ってきております。ラグビースクール
だけは増えています。
この中で、これは子供たちのことでもありますが、外国の指導では、子供たちに対しては上手に遊ばせると
いうことを第一に考えていますし、例えば、我々の、日本の勝利至上主義の弊害っていうのは、野球でもサッカー
でもそうですが、教えてる大人の方が熱くなって子供たちに勝たせたがる、そういう指導をするという傾向があります。
それから、この頃はもうないと思いますが、体験的に自分たちがやった頃のラグビーを教える。
今はそうでない。本当に全く初めての人にどうやって興味を持たせるかというような練習方法が盛んになっていますから
外国でよく言うのは、「君のチームに強いのがいるか、エースがいたらそいつをスタンドオフにするな。」ということを、
彼らはよく言います。「スタンドオフにしたら、そいつ一人が楽しんで、周りはみんな楽しめなくなる。」
「そういうやつはウイングに置け。みんながそいつにボールを持たせようとしてパスをするだろう。」
そういう、色々な意味で、勝つことよりも楽しくやることを第一に教えています。
したがって、クラブに参加した子は、練習だけやって帰るんではなくて、紅白試合でラグビーを経験したことが
ない子にも、周りが教えながら、こういう初めての子と一緒にやりながら勝利を志向するのが喜びなんだと言うことを、
大人がよく教えてくれています。たしかに、ラグビー文化の根強さというものを感じさせるところだと思います。
日本の勝利至上主義、ちょっとこれは話が違いますけれども、私たちもそういう中にどっぷりと浸かってきた、
優勝めざして優勝意外は何の価値もないと言ってきた人間ですから、とても恥ずかしいんですけれども、
海外に行った時に、彼らは必ず「君のクラブ、早稲田大学にはメンバーが何人いる。」と聞いてきます。
私が「150人いる。」と言うと、「じゃあ、何チームでオフィシャル・ゲームを何試合やってんだ。」
彼らの感覚では、150人いたら、最大30人、普通は25人ですね、25人をひとくくりとして6つくらいの
チームを編成して、それぞれにコーチをつけて、必ずゲームをエンジョイさせる、そういうやり方をします。
だから、クラブなんですね。
日本のラグビー部の現状というのは、ゴルフクラブのメンバーとして迎えられたのに、君は下手だからグリーンに
出ちゃだめだよ、と言われるのと同じ訳ですね。
外国では、クラブメンバーになったら、君は経験がないから、あるいは身体が小さい、だから下のグレードのチームで
やってくれよ、と明日、6軍のフランカーを君にやらせる、それなら納得するんですけれども、どこも試合をやらせて
もらえなかったら、彼らは絶対それでは納得しません。
だから、よく聞かれるのは、我々はファースト・フィフティーンのゲームだけだ、オフィシャルとしてはですね。
そうすると、彼らは「ちょっと待ってくれ、じゃ、あとのメンバーは何やってんだ。」と聞きます。
そして、「レギュラー目指して頑張っているんだ。それから、試合に出られなかったとしても、優勝チームの一員だと
いうような誇りを持って、云々。」と言います。
彼らは、全然それはもう次元が違いますね。「それはおかしい。だって、クラブに入るっていうのは、ゲームを
エンジョイするために入るんだろう。」 彼らは、そんな練習だけやって、4年間、卒業しちゃうっていうのは、
それはラグビーをやったうちには数えないと思います。
オックスフォードなんかでも、オックスフォード代表チーム25名が決まる、それ以外の人はセカンド・チームは
あれはウルフハンズですかね、そういうニックネームが、3番目がバイキングかな、そういうニックネームで、もう
たくさん公式なスケジュールを組んでいますから。
日本も、ともかくゲームをさせる、ゲームができるようにするために、どういうことを教えてやったら、うまい下手は
別にしてゲームができるようになるか。
そのゲームというのも必ずしもハードなということでなくて、ラグビーごっこ、追いかけっこ、それこそ
タグ・ラグビーでいいわけですが、そういうことでコーチは、「来週もまた来たい。」と子供に言わせなかったら、
そのコーチは失格な訳ですから。
日本の場合には、プレイヤーのためにコーチがいるんじゃなくて、コーチのために選手がいるというような感覚で、
根本的な間違いがあるんだと思います。
だから、ぜひ子供たちには、親が行けって言うんじゃなくて「お父さん、今度はいつ?」って言うような練習の内容を
考えて工夫して、子供たちの目線でラグビーを教えてやってほしいと思います。